血液透析を行うにあたり、患者さんも医療従事者も共通して苦手なものが

『穿刺』

です。

現在、日本の透析施設では、リドカインテープとエムラクリームが痛み止め用の局所麻酔として使用されています。

今回は、透析患者さんの穿刺に対する苦痛や、痛み止め対策などについて、話を聞いてみました。

透析の穿刺

透析では、一般的な採血に使う細い針とは比べものにならないほど太くて長い針を使用します。

そして、その針を1回の透析で2本、週に3回刺されることになります。

透析のたびに太い針を刺されることになる患者さんのストレスは計り知れないものがあります。

以前、透析患者さんに対して

『透析はなにがつらいのか』

を調査した際、『治療時間の長さ』に次いで多い答えが『穿刺』でした。

透析用の針と比較用の爪楊枝

局所麻酔の種類

現在、日本で使用されている『透析の穿刺時に使用される局所麻酔薬』は大きく分けて以下の2種類です。

  • リドカインテープ
  • エムラクリーム

リドカインテープ

リドカインテープは、現在日本で3種類の商品が発売されています。

  • 先発品である日東電工の『ペンレステープ』
  • いわゆるジェネリックと言われるニプロファーマの『リドカインテープNP』
  • 同じくジェネリックである祐徳薬品工業の『リドカインテープYP』
製品名薬価(1枚)製造販売会社先発/後発薬剤量
ペンレステープ18mg31.3円日東電工先発品リドカイン18mg
リドカインテープ18mg「NP」45.2円ニプロ後発品(ジェネリック)リドカイン18mg
リドカインテープ18mg「YP」31.6円祐徳薬品工業(発売:メディキット)後発品(旧ユーパッチ)リドカイン18mg

これら3種類のテープには『リドカイン』という局所麻酔薬が18㎎含まれています。

このリドカインという成分が、皮膚の中に浸透し、穿刺時の痛みを和らげます。

この3種類のテープに含まれる薬剤の量と成分は同じでなるため、それぞれ効果・効能について大きな差はありません。

ただし、テープの素材がそれぞれ異なり、

  • 粘着性
  • かぶれやすさ

などに差があるとされています。

ペンレステープ

リドカインテープのなかで、いわゆる「先発品」と呼ばれているのがペンレステープです。

リドカインテープ「NP」

ジェネリックのリドカインテープです。

こちらは「ニプロファーマ」が製造販売しているので、「NP」と呼ばれます。

リドカインテープ「YP」

こちらもジェネリックのリドカインテープです。

こちらは祐徳薬品工業が製造しており、YPと呼ばれています。

少し前までは「ユーパッチ」という名前で販売されていました。

エムラクリーム

エムラクリームは、多くの患者さんが

ペンレスやリドカインテープより痛くない

と感じているそうです。

エムラクリームとリドカインテープとの違い

エムラクリームには、

  • リドカイン
  • プリロカイン

と呼ばれる、2つの麻酔成分が入っています。

リドカインもプリロカインも局所麻酔薬として使用されていますが、

プリロカインは「浸透しやすく、皮膚の深い層まで効きやすい薬」とされています。

そのため、リドカインテープよりもエムラクリームの方が穿刺痛に対する効果が発揮されやすいと言われています。

エムラクリーム vs リドカインテープ

有効成分

エムラクリーム:キシロカイン + プリロカイン

 痛み止めとしての効果が比較的強め

リドカインテープ:キシロカイン

 痛み止めとしての効果が標準的

薬剤の形

エムラクリーム:クリーム(塗るタイプ)

 穿刺部に塗って、さらに塗った部分をフィルムなどで覆う必要がある

リドカインテープ:テープ(貼るタイプ)

 穿刺部に貼るだけで簡単

添付文書上の効果発揮時間

エムラクリーム:穿刺60分前

 添付文書には、『静脈留置針穿刺予定部位に、60分間塗布する。』とあります。

 ただし、『1回あたりの塗布量は10gまでとし、塗布時間は120分を超えないこと

 と容量の上限も記載されているので注意して使用してください。

リドカインテープ:穿刺30分前

  添付文書には、『静脈留置針穿刺予定部位に約30分間貼付する。』とあります。

以上を踏まえ、簡単に比較をしておきます。

エムラクリームとリドカインテープの良いところ

〇エムラクリーム ⇒ 痛みに対する効果が大きい

〇リドカインテープ ⇒ 貼るだけなので手間がかからない

テープを張る時間・クリームを塗る時間

添付文書上では、

エムラクリーム:穿刺60分前

リドカインテープ:穿刺30分前

と記載があります。

しかし、実際には、痛み止めの効果が発揮される時間は患者さんそれぞれ異なります。

(リドカインテープ)2時間前に貼らないと効果ないです。

という患者さんや

(エムラクリーム)いつも30分前に貼ってるよ。

それで痛くないから良いかなって。

という患者さんがおり、全員が添付文書通りの貼付時間・塗布時間にしているわけではありません。

貼る時間によって、痛みがかなり違うという患者さんもいますので、自分に合った貼付時間・塗布時間を見つけてみてください。

必要がなければ痛み止めを使わない選択肢も

エムラクリームも、リドカインテープも、皮膚への負担がまったくないわけではありません。

長時間・頻回な使用によって、かぶれや発赤、かゆみなどの皮膚トラブルが生じることもあります。

特に透析患者さんでは、皮膚トラブルを持つ患者さんもたくさんいらっしゃいます。

そのため、「痛みが強くてつらい」「穿刺への不安が大きい」といった場合には使用すべきですが、痛みが気にならない方は、無理に使用しなくても良いと思います。

もし、痛み止めを使用して、皮膚トラブルが生じてしまったら、皮膚の様子を見ながら、透析スタッフと相談して使用方法を考えてみてください。

穿刺部の皮膚トラブル例

穿刺の痛みとどう向き合うか

透析の穿刺は、毎回必ず必要で、 「今日は痛くないといいな」 と誰もが願うと思います。

痛み止めテープやクリームは、あくまで“補助”ではありますが、自分に合う方法を知っておくことは確実に安心につながります

今回まとめた

  • 痛み止めの種類
  • 貼る時間や塗る時間

は、どれも患者さん自身が選択できる大切なポイントです。

痛みの感じ方は人それぞれで、

「テープで十分な人」

「エムラクリームの方が安心な人」

「そもそも貼らない方が肌が楽な人」

と、本当に幅があります。

大切なのは、 “自分にとって一番ストレスが少ない方法を見つけること”

そのために、気になることは遠慮なくスタッフに相談してほしいと思います。

穿刺の痛みが少しでも軽くなり、 毎回の透析が今より少しでも楽になりますように。

それでは、素敵な透析ライフをお過ごしください。

ABOUT ME
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佐藤さん
病院に勤めて15年。 様々な患者や医師、看護師などの医療関係者と関わってきました。 透析の話を中心に、病気の話、患者の話、スタッフの話、病院内での様々な話を投稿したいと思っています。