【人工血管とは】血液透析で使用するバスキュラーアクセス

透析を行うためには、まず手術をして「バスキュラーアクセス」を作成する必要があります。
バスキュラーアクセスには以下の種類があります。
バスキュラーアクセス
- 内シャント
- 人工血管(グラフト)
- 動脈表在化
- カテーテル
透析をする上で絶対に必要になるバスキュラーアクセス。
今回は人工血管(グラフト)についてまとめてみます。
その他のバスキュラーアクセスについては以下の記事で解説しています。
動脈と静脈
まずは解剖学からです。
動脈と静脈について。
大雑把に言うと、動脈が太い血管で、静脈が細い血管です。
動脈
- 心臓から出る血管
- 身体の組織に酸素を供給するための血管
- 血液がたくさん流れている→傷ついたら大惨事
- 傷ついたら大惨事なので、身体の深い部分に隠れている
- ドクッドクッと拍動している
- 手首とか首の動脈は触ると拍動しているのが分かる
- 動脈の血は鮮やかな赤色
静脈
- 心臓に入る血管
- 身体の組織に酸素を供給したあとの血管
- 血液の量は多くない→傷ついても些事
- 傷ついても些事なので、皮膚のすぐ下にある
- 拍動していない。静かな血管
- 静脈の血は暗い赤色

バスキュラーアクセスってなに?
透析治療では、血管に針を刺して、その針から血液を体の外に出す必要があります。
その針を刺すための血管のことを「バスキュラーアクセス」といいます。
ただし、バスキュラーアクセスには条件があります。
透析をするために必要な血管
- 流れている血液の量が多い(1分間に600~700ml程度必要)
- 刺しやすい
ところが、静脈にはそんなにたくさんの血は流れていません。
動脈は大事な血管で、身体の深いところにいるので、決して刺しやすい血管ではありません。
つまり、動脈も静脈も、バスキュラーアクセスとして必要な条件を備えていないのです。
そのため、手術によって簡単に針を刺すことが出来て、たくさん血が流れるバスキュラーアクセスを作る必要があります。
人工血管ってどんなもの?
人工血管という名前の通り人工的に作られた血管のことを人工血管と言います。

この人工血管の両端を、腕の動脈と静脈にそれぞれ繋げると、人工血管の中を充分な血液が流れることになります。その人工血管に針を刺して透析を行うことになります。

「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」より転用
人工血管は透析だけではなく、心臓血管外科などの領域でも使用されているもので、透析患者さんの中にも心臓の近くに埋まっている方もいるのではないでしょうか。
人工血管って誰が使ってるの?
人工血管は主に静脈に針を指せないような患者さんに使用します。
人工血管を選ぶのはどんな患者さん?
- 自分の静脈が非常に細い患者さん
- 心臓の機能が十分に保たれている患者さん
①自分の静脈が非常に細い患者さん
最も一般的なバスキュラーアクセスである内シャントは、手術によって自分の静脈を発達させて太くするものです。
そのため、静脈が細すぎて手術が出来なかったり、十分に発達する見込みがない場合に人工血管を使用します。
②心臓の機能が十分に保たれている患者さん
人工血管を埋め込むと、人工血管にたくさんの血液が流れ込むため、その分心臓がたくさんの血液を送り込む必要があります。
そのため、もともとの心臓の機能が十分に保たれていないと、人工血管は適応になりません。
人工血管は、2017年の統計で透析患者さんのうち、7.3%の患者さんが使用していました。
下図のピンク色が人工血管の患者さんの割合です。

人工血管の特徴
人工血管の特徴には以下のものがあります。
人工血管の特徴
- 静脈が細くてもバスキュラーアクセスとして使用できる。
- 異物のため、感染した時に重症化しやすい
- 心臓の働きに大きな負担がかかる
①静脈が細くてもバスキュラーアクセスとして使用できる
バスキュラーアクセスとして最も一般的な内シャントは、静脈があまりにも細い場合などは作成できません。
動脈表在化も、返血用の針は静脈への穿刺が必要となるため、静脈が細い場合は適応とならない場合があります。
そのような患者さんに使用され、穿刺用の静脈の有無を選ばないのが人工血管です。
②異物のため、感染した時に重症化しやすい
人工血管は、人工的に作られたものであり、生体にとってみれば異物です。
そのため、感染を起こすと治療が難渋することが多く、人工血管の抜去が必要になることも良くあります。
また、対応が遅れると、重症化することもあるので、管理がとても重要です。
日ごろの観察を怠らないように気を付けてください。
③心臓の働きに大きな負担がかかる
人工血管を埋め込むと、人工血管にたくさんの血液が流れ込むため、その分心臓がたくさんの血液を送り込む必要があります。
つまり、心臓に負担がかかりやすく、心不全になる可能性があります。
※内シャントの場合も心臓に負担がかかりますが、一般的に心臓への負担は
人工血管 > 内シャント
であると言われています。
人工血管の管理
人工血管付近に耳を当てると、シャント音を聞くことが出来ます。
シャント音は連続的に低い音が流れています。
人工血管を使用している場合、このシャント音は毎日確認してください。
普段と違う音がしたり、音がしない、スリルを感じないということがあったら、人工血管が閉塞している可能性があるので、早めに透析施設に連絡をして、検査をしてください。
早期に発見することで、人工血管の再開通の可能性が高くなります。
また、一番安いもので良いので聴診器を購入してシャント音を聞いてみると、シャント音の違いに気づきやすくなるため、オススメです。

人工血管の穿刺
最後に人工血管に対する個人的な感想を書かせていただきます。
人工血管に対する穿刺
人工血管は、人工的に作られた血管というだけあって、非常に刺しやすいです。
人工血管で失敗したことはあまり記憶にないありません。
感染した時のリスクや、心臓への負担など、デメリットもあるバスキュラーアクセスです。しかし、毎回穿刺が難渋する患者さんに対しては、選択肢の一つとして考えることの出来る血管です。

第一選択にはなりにくい人工血管
人工血管は、感染のリスクや、心臓への負担が大きいというリスクがあるため、バスキュラーアクセスの中で第一選択にはなりません。
しかし、心臓の機能が保たれていれば、静脈の太さに関係なくバスキュラーアクセスを作ることが出来て、穿刺もスムーズになるという大きなメリットも持っています。
日々の管理は気を付ける必要がありますが、静脈が細く、穿刺に難渋する透析患者さんにとっては心強い味方です。
それでは素敵な透析ライフをお過ごしください。


















