透析をしている患者さんや、透析間近の患者さんは、移植について考えてことがあると思います。

透析関連の学会誌を読んでいる際、日本で移植が増えない理由について考察している論文があり、興味深く拝読させていただきました。

移植については、腎代替療法の理想的な治療とされています。

しかし、日本の腎臓移植数は世界最少レベルです。

今回は、腎移植について考えました。脳死についての考え方など、少し繊細な部分にも触れておりますので、あらかじめご了承ください。

腎移植の実態

まずは言葉の説明です。

ドナー

ここでは腎臓を提供する人。腎臓は健常。

レシピエント

ドナーから提供された腎臓をもらう人。腎不全の患者さん。

生体腎移植

生きているドナー(提供者)が腎臓を提供(移植)すること。

献腎(けんじん)移植

亡くなった人がドナー(提供者)となって腎臓を提供(移植)すること。

心臓が止まった状態で行われる「心停止下の献腎移植」と、脳死の状態で行われる「脳死下の献腎移植」の2種類がある。

献腎移植については、心停止後よりも、脳死状態での献腎移植の方が一般的に多く行われている

次に、腎移植の実態について記載しておきます。以下の数字は、日本移植学会 2024 臓器移植ファクトブックを参照させていただいております。

2023年の腎移植は合計で2001件行われました。

そのうち、生体腎移植は1753件で、献腎移植は248件でした。

10年ごとの移植件数の推移

2003年20132023年
生体腎移植728件1438件1753件
献腎移植138件155件248件
合計866件1593件2001件

移植件数は、年を追うごとに増加しています。

また、移植後の生着率も、年代を追うごとに改善されています。

生体腎移植をした時の生着率

1年後の生着率5年後の生着率10年後の生着率
1983~2000年93.0%81.9%69.0%
2001~2009年97.5%93.2%83.6%
2010~2020年98.7%93.0%81.2%

献腎移植をした時の生着率

1年後の生着率5年後の生着率10年後の生着率
1983~2000年81.6%81.6%51.9%
2001~2009年92.6%83.2%69.8%
2010~2020年95.9%87.8%74.2%

上述の通り、腎移植の成績は非常に優秀なのです。

しかし、献腎移植の待機登録者数は2023年末で14,330人であり、移植を希望しているのに待機状態になっている患者さんがまだまだ多くいらっしゃいます。

日本は移植件数が少ない?

ご存じの方も多いかと思いますが、日本は世界的にみると、非常に移植の少ない国です。

その影響で透析の技術が上がったといっても良いのかもしれません。

下図は2022年の人口100万人当たりに対する年間移植件数のグラフです。日本移植学会ホームページより引用させていただいています。

2022年 世界の年間移植件数 上位5カ国と、韓国、日本 (日本移植学会HPより引用)

日本で移植が少ないのはなぜ?

日本では移植医療において、亡くなった方からの腎臓提供(献腎移植)が少ないという大きな特徴も見られます。

下図は、腎臓移植の世界上位5か国+韓国+日本における献腎移植と生体腎移植の割合です。

青が献腎移植(亡くなった方からの移植)で、赤が生体腎移植を示しています。

日本は他の国に比べると、献腎移植の件数が少ないことが分かります。

ただし、メキシコは日本と同様に生体腎移植が主流のようです。

2022年 世界の年間移植件数 上位5カ国と、韓国、日本
献腎移植、生体腎移植の割合(日本移植学会HPより引用)

脳死に関する考え方

文献には、献腎移植が少ない理由に、「脳死の意義が正しく浸透していない」と書いてありました。

献腎移植は脳死の状態で行われることが多いため、脳死状態の患者さんからの臓器提供が必要になります。

しかし、日本では、脳死の意義が正しく浸透していないため、脳死状態の患者さんからの臓器提供が少ないのだということでした。

確かに日本では脳死=死というイメージがあまりないのではないかなと感じることがあります。

実際に病院で働いていても、「脳死」と診断された患者さんを見たことがありません。私自身が脳神経内科や脳神経外科との関わりが薄いからという理由もあると思いますが、長い期間病院で働いていて、その場を見たことがないということは、脳死の判定が下される事はあまり多くないのだと思います。

患者さんのご家族の中にも、心臓が動いているのであれば、最後まで頑張ってほしいと希望する方もたくさんいらっしゃいます。

もちろんその考えを否定する気はないですし、脳死=死という考えが正しいといいたいわけでもありません。

スペインでは、脳死と診断されると、そのご家族に対して移植コーディネーターが、「スペインでは臓器を提供するのが普通」だというようなお話をするそうです。

日本でそんな話をしたら、SNSなどで拡散されて、少し問題になりそうな気もします。

そう考えると、献腎移植の割合が多い国とは、脳死に対する考え方が違うのかなと感じました。

参考文献:本透析医会雑誌 Vol33 No1 2018 吉開俊一「日本の臓器移植における啓発の不備の解析」

必要な人への臓器提供

脳死と臓器提供については、個人で様々な考えや倫理観がありますし、最終的には個人やそのご家族が決める問題です。

しかし、

  • 腎臓移植は現在の腎代替療法で最も優れた治療であること
  • 移植の技術は上がっているが、臓器の提供者数が少なく、移植が出来ない患者さんが1万人以上いること

この2点は事実です。

具体的に私に何が出来るわけではありませんが、日本全体で、脳死状態と臓器提供に関する問題がもっと浸透して、様々な場所で取り上げられれば良いのになと思います。

そして、移植を必要としている患者さんに、少しでも多くの臓器が届くようになって欲しいと感じています。

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佐藤さん
病院に勤めて15年。 様々な患者や医師、看護師などの医療関係者と関わってきました。 透析の話を中心に、病気の話、患者の話、スタッフの話、病院内での様々な話を投稿したいと思っています。