透析患者さんの死亡原因で2番目に多いのは?【心不全】

透析医学会による2024年の統計調査では、透析患者さんの死亡率2位は心不全となっていました。

ちなみに、2024年における透析患者さんの死亡原因第1位は『感染症』でした。
透析患者さん死亡原因のTOP2【感染症・心不全】
透析患者さんでは、感染症と心不全が主要な死因を占めています。

上の図は透析医学会による2024年の統計調査による、これまでの透析患者さんの死亡原因の推移です。
心不全は、2021年に感染症に抜かれるまで、透析患者さんの死亡原因として一番多い疾患として知られていました。
薬や治療方法の発達もあり、死亡原因としては減少傾向にありますが、それでも死亡原因の20%近くを占めています。
2024年の透析患者さん死亡原因
第1位:感染症…24.2%
第2位:心不全…19%
第3位:悪性腫瘍(がん)…7.4%
第4位:脳血管障害(脳梗塞・脳出血)…5.1%
第5位:心筋梗塞…3.2%
心不全って何?
心不全とは、文字通り
心臓の機能が悪いために、息切れやむくみが起こる病気です。
本記事は、心不全について、2025年改訂版心不全診療ガイドラインを参照しています。
心不全になると、心機能は元通りにならない
下の図のように、心不全は、良くなったり悪くなったりしながら生命を縮めていく病気です。

つまり、一度心不全を起こして心機能が低下してしまうと、たとえ治療しても元のレベルまで回復することはないのです。
そして、日本循環器学会は、心不全のリスクとして、慢性腎不全を2025年から新たに加えています。
つまり、透析患者さんというだけで、心不全のリスクを持っているということになります。
様々な心不全のリスク
日本循環器学会が挙げている、心不全のリスク因子のうち、透析患者さんに関係の深そうなものを紹介します。
心不全のリスク
- 高血圧
- 動脈硬化性疾患
- 糖尿病
- 慢性腎臓病(CKD)
- 肥満 など

心不全を予防するには
生活習慣の改善
日本循環器学会のガイドラインでは、心不全の予防には生活習慣の改善が重要としています。
生活習慣の改善
- 運動・体重管理
- 食生活
- 禁煙
- 節酒
運動・体重管理
透析患者さんに対しても、適度な運動が推奨されています。
透析による疲労もあるかと思いますが、可能な限り、適度に身体を動かすようにしましょう。
食生活
慢性腎不全の患者さんに対しては減塩が推奨されています。
高血圧の治療
日本循環器学会は、心不全の予防策として、高血圧の治療も重要だとしています。
ただし、透析患者さんでは、血圧を下げすぎると脳梗塞などのリスクが高まるとされており、より慎重な血圧管理が求められます。
心不全の原因となる病気
日本循環器学会が挙げている、心不全の原因となる病気のうち、透析患者さんに関係の深そうなものを紹介します。
心不全の原因となる病気
- 虚血性心疾患
- 弁膜症
- 不整脈 など
虚血性心疾患
「虚血」とは、“血液が足りず、組織が酸素不足になること”です。
つまり、虚血性心疾患とは、何らかの原因で、心臓の血管が詰まってしまい、心臓の筋肉に酸素が足りなくなっている状態です。
虚血性心疾患で代表的なのが「狭心症」と「心筋梗塞」です。
ちなみに、心臓の血管は「冠動脈」と言って、この血管が詰まったり細くなったりするのが虚血性心疾患です。

冠動脈の太さは、2mm~4mmほどであり、詰まりやすい血管と言えます。
透析患者さんの虚血性心疾患
冠動脈が閉塞してしまった場合、カテーテルによる治療(PCI)か、手術(CABG)を行うことになります。
透析患者さんでは、リンやカルシウムの調整が難しく、血管の石灰化が進みやすい状態になっています。
そして、石灰化している血管が閉塞している場合、治療成績が悪くなるということは多数の研究で示されています。
そのため、透析患者さんが虚血性心疾患になってしまった場合、治療が困難になる場合があります。
高いリスクがあることを知り、12誘導心電図や心臓エコーなどの定期検診をしっかり受けて、早期発見・早期治療に努めましょう。
弁膜症
心臓には、「弁」が4つあります。
- 三尖弁
- 肺動脈弁
- 僧帽弁
- 大動脈弁

普段は、4つの弁が開いたり閉じたりすることで、肺や全身に血液を送っています。
弁膜症になると弁がうまく開閉できず、全身へ十分な血液を送り出せなくなります。
透析患者さんの弁膜症
重度の弁膜症となってしまった場合、多くの場合は開胸手術を行うことになります。
透析患者さんでは、リンやカルシウムの調整が難しく、弁が石灰化しやすい状態になっています。
そして、弁が石灰化している場合、治療成績が悪くなるということは多数の研究で示されています。
そのため、透析患者さんの弁膜症では、治療が難渋しやすいことがあります。
弁膜症においても、透析患者さんは高いリスクを持っていることを知り、心臓エコーなどの定期検診を怠らないように、早期発見・早期治療に努めていきましょう。
不整脈
不整脈には、様々な疾患がありますが、大別すると以下の二種類に分けられます。
- 心臓の動きがゆっくりになる『徐脈』
- 心臓の動きが速くなる『頻脈』
透析患者さんの不整脈
透析患者さんの不整脈で最も多いのは、『心房細動』と言われています。1)
心房細動は、心不全だけでなく、脳梗塞の発症リスクにもつながる不整脈です。
自覚症状がない場合もあるので、12誘導心電図などの検診をしっかり受けるようにしてください。
また、シャント音のリズムが不規則になっている場合には、心房細動が疑われます。
異常を感じたら、透析の主治医でも良いので相談してみてください。
参考文献:1)Sato K, Nakamura T, Ishii M, et al. Prevalence and characteristics of arrhythmias in maintenance hemodialysis patients: A retrospective single-center study. Cureus. 2026;18(3):e45231. doi:10.7759/cureus.45231
治療を行う際の注意点
透析患者さんが、心不全や、その原因となる病気(心筋梗塞、弁膜症、不整脈など)になってしまった場合、石灰化などの理由で治療が難渋する場合があります。
そのため、心不全の治療においては、病院選びが非常に大切になります。
病院のホームページしっかり確認して、該当する病気に対する治療の実績が多い病院を選択するようにしてください。

心不全には生活改善・早期発見・早期治療
一度心不全になると、心臓の機能が元に戻ることはありません。
心不全は、良くなったり悪くなったりしながら生命を縮めていく病気です。
日本循環器学会では、心不全の予防で最も大切なのは『生活習慣の改善』としています。
透析患者さんにおいては、高血圧の管理も重要としています。
それでも透析患者さんというだけで、心不全のリスクが高く、心不全を完全に防げるわけではありません。
そのため、定期検診を忘れずに受けるようにして、病気の早期発見・早期治療に努めるようにしてください。
それでは素敵な透析ライフをお過ごしください。




















