『薬を飲めない』が続くとどうなるのか。ある腎不全患者さんの体験から

腎機能が悪化してきて、まだ透析や腎移植が必要になる前の段階を『保存期』といいます。
保存期は、残っている腎臓の働きを“できるだけ長く守る”時期です。
透析を導入してからも同じことが言えますが、この時期になると、どうしても多くの薬が必要になるため、飲み忘れや飲み間違いが起こりやすくなります。
特にご高齢の患者さんや一人暮らしの患者さんは、薬の管理が追いつかず、間違いが増える傾向が強くなります。
そのため、腎不全の保存期は、ご家族など周りのサポートが非常に重要な病気と言えます。
薬を飲めない患者さん
薬?
変わったんだっけ?
あぁ、忘れていたよ。
病気の進行とともに変わっていく薬の種類・量・飲み方。
その変化に対応できず、薬の飲み間違いや、飲み忘れをしてしまう患者さんは、一定数いらっしゃいます。
薬を飲めずに過ごしていると、どのような結果になるのか。
一例ですが、過去の経験をご紹介します。
薬を飲めないとどうなるの?【実例】
ある寒い冬の朝。
緊急透析の連絡がきました。
腎臓内科に通院していた患者さん。
腎不全の保存期であり、まもなく透析の導入予定であった患者さん。
自宅の近くで座り込んでいるところを発見され、救急搬送されてきてしまいました。
その患者さんは、高齢で一人暮らしをしている患者さんでした。

尿毒症・低体温
真冬だったこともあり、救急搬送されてきたときには、体温は34℃近くまで低下していました。
腎臓の異常を示す電解質(カリウム・重炭酸)の検査結果も、驚くほどの異常値を示していました。
入院時、意識はあったようですが、言葉を発することもできず、直ちに透析が必要と判断されました。
検査結果から、この患者さんは薬をうまく飲めていなかったのではないかと推測されていました。

緊急透析
その患者さんは、ICUに運ばれ、すぐに血液透析をすることになりました。
- ICUに入室
- 血液透析を行うためにICUへ入室です。
- 首から透析用のカテーテルを挿入
- 首から内頸静脈という血管に、太さ4mm、長さ15cmほどの管を挿入します。
※写真はバクスター社HPより

- 透析の開始
- カテーテルを使用して緊急透析を開始します。

緊急透析後・・・
その後、患者さんは体温も電解質のバランスも整い、無事にICUを退室することが出来ました。
しかし、足と認知機能に障害が残ってしまい、自宅退院が難しくなってしまいました。
身寄りもなかったので、施設に入るしかないような状況であったと記憶しています。

正しく薬を飲むことの難しさ
腎不全(特に保存期)の患者さんは、とても多くの薬が必要になります。
患者さんの高齢化が進む中、これだけの量の『薬を管理すること』は非常に難しいものです。

しかし、薬を正しく管理できていないと、命にも関わる重大な事故が起きることもあります。
薬を正しく飲むには
周りからのフォローが一番大切
ご家族や親戚などで、ご高齢の方が腎不全となり、通院するようになったら気にかけてあげてください。
ご高齢の方にとって、薬の管理は思っている以上に大変なことです。
ふだん病気とは縁のない方にとっては、薬の多さにびっくりされるかもしれません。
- 薬の管理がしっかりできているか確認する
- お薬カレンダーなどを使って、薬の管理を手伝ってみる
など、ちょっとした気遣いでも、大きな力となるはずです。

フォローの継続も大切
そのようなフォローは毎日でなくてもかまわないと思います。
しかし、出来れば、継続してお手伝いをしてあげてください。
腎不全の保存期には、薬の量や種類が頻繁に変わります。
- 薬の変化に対応できているか
- なぜ薬が変わったのか
などを知ることで、ご家族の状態をさらに知ることが出来ると思います。
生活支援サービスに頼る
- ご家族が遠方に住んでいる場合
- 『これまでは薬の管理ができていたのに最近出来なくなってきている』という場合
そんな場合は、医療機関や地域包括支援センターに相談してみてください。
自治体や民間が行っている見守りサービスや生活支援サービスの相談が可能です。
ご自身での見守りが難しいようであれば、そのようなサービスも充分に利用しましょう。
薬の一包化
薬局や医師に依頼すれば、薬を一包化してもらうことも可能です。
薬を一回分ごとにまとめてもらうと、内服の際に負担軽減となります。
ただし、すべての薬が一包化できるわけではないということには注意が必要です。
ご家族の健康のために
患者さんがご高齢の場合、内服管理は、患者さんだけに任せるにはあまりにも複雑です。
だからこそ、周囲のサポートや仕組みづくりが大きな力になります。
一緒に整え、一緒に続けていく。
ご家族のためのその積み重ねが、腎不全と向き合う日々を支えていきます。
















