透析患者さんが入院する主な原因③【治療内容別|透析施設での血液透析 vs 在宅血液透析 vs 腹膜透析による比較】

2023年の透析医学会による統計調査によると、40%以上の透析患者さんが2023年の間に1回以上の入院を経験していました。
その調査による、透析患者さんの主な入院理由について、以下の記事でまとめています。
しかし、透析患者さんといっても、年齢や治療スタイルは本当にさまざまで、一人ひとり状況が異なります。
2017年の透析医学会の統計調査では、年齢別や治療方法別の入院理由を調査しています。
透析患者さんが入院する原因となる疾患や入院の頻度を、年代別・透析歴別にしてまとめている記事はこちら。
今回の記事では、透析患者さんが入院する原因や入院の頻度を、施設血液透析・在宅血液透析・腹膜透析の治療内容別にまとめています。
1年間での入院の有無【治療内容別】
1年間での入院の有無を、透析施設での血液透析、在宅血液透析、腹膜透析の3つで比較しています。

1年間で入院を経験する割合は、在宅血液透析の患者さんが最も少ない結果となっていました。
在宅での血液透析は、体への負担が少なく、毎日を元気に過ごしやすい方法だということはこれまでの研究でもわかっています。
今回の結果も、在宅透析の長所を示すものになっています。
入院理由【治療方法別】
それぞれの治療方法別の入院理由は以下の通りです。

こうしてみると、治療方法によって、罹患する病気の種類が異なることがわかります。
しかし、全ての治療方法で、共通している主な入院理由は
透析患者さんの入院理由TOP3
- バスキュラーアクセス
- 心疾患
- 感染症
この3つはすべての治療方法で上位3つに入っています。
ちなみに、日本人全体での入院理由TOP3は以下のようです。
日本人全体の入院理由TOP3(2023年)
- 統合失調症など精神疾患
- 脳血管疾患
- がん
透析患者さんと日本人全体の入院理由を比べると、上位3つの理由がすべて違う理由になっています。
シャントトラブルや心疾患、感染症などは、透析患者さんには特に多くみられる症状と言えます。

透析施設で血液透析を行っている患者さんの入院理由
- バスキュラーアクセス(26.0%)
- 心疾患(21.2%)
- 感染症(10.7%)
- 整形外科領域(9.6%)
日本の透析患者さんはほとんどが透析施設による透析療法
現在、日本の透析事情は、95%以上の患者さんが、病院もしくは透析クリニックで治療を行っています。
そのため、一般的に透析患者さんが入院する理由と同様の特徴になっています。

在宅で血液透析を行っている患者さんの入院理由
- バスキュラーアクセス(19.5%)
- 感染症(18.4%)
- 心疾患(16.1%)
在宅透析を行っている患者さんの入院理由の特徴についてまとめてみます。
心血管系の疾患が非常に少ない
『心疾患』・『大動脈・末梢血管疾患』・『脳血管疾患』といった、透析患者さんに特に多いと言われる、心血管疾患が非常に少なくなっています。
心血管系の疾患は、リンやカルシウムの蓄積によって血管が石灰化しやすくなることが大きな要因です。そこに高血圧・体液量の変動・貧血などが重なり、血管が硬くなり、心臓への負担が増えてしまいます。
つまり、透析量の不足が心血管系の疾患の原因につながるのです。
その点、在宅透析には、透析時間を自分で決定できるという特徴があります。
そのため、透析量を充分に確保することが可能で、透析不足による心血管系の疾患が少なくなっているのではないかと予測できます。

バスキュラーアクセス関連の入院も少ない
施設での血液透析と比べると、在宅透析ではバスキュラーアクセス関連の入院割合も少ないことが分かります。
内シャントの閉塞や狭窄は、透析中の血圧変動が一つの要因として挙げられます。
在宅透析では、透析時間や透析回数を自分で決定できるため、血圧の変動が少ないとされています。
そのため、シャント閉塞などのトラブルが少なくなっているのではないかと予測できます。

感染症による入院の割合が多い
心血管系の疾患や、バスキュラーアクセス関連の入院割合が少ない代わりに、感染症による入院の割合が増えています。
他の疾患の入院理由が少ないために、相対的に感染症が増えたのか、その他に理由があるのか、現時点では分からないので、詳細なコメントは控えさせていただきます。

腹膜透析を行っている患者さんの入院理由
- 感染症(24.2%)
- 心疾患(15.1%)
- バスキュラーアクセス(10.4%)
腹膜透析を行っている患者さんの入院理由の特徴についてまとめてみます。
感染症の割合が多い
腹膜透析で注意するべき合併症が、感染症です。
腹膜透析を行うための、カテーテルからの感染が非常に多く、重症化すると腹膜炎や「被囊性腹膜硬化症:EPS」へ移行することもあり、自己管理が非常に大切な治療方法です。
今回の結果も、その重要性を示していると言えます。

バスキュラーアクセスを持たない患者さんが多い
腹膜透析では、内シャントなどのバスキュラーアクセスを持たない患者さんが多くなります。
血液透析とのハイブリット透析の患者さんや、血液透析への移行前の患者さん以外、腹膜透析の患者さんはほとんどバスキュラーアクセスを持っていません。
そのため、バスキュラーアクセス関連の入院数は、施設血液透析や在宅透析に比べてかなり少なくなっています。
安心して透析生活を送るために
透析患者さんに限らず、入院は皆が経験するもので、入院が好きという方は少ないと思います。
透析患者さんの場合、自分の治療方法によっても、入院する理由は様々です。
「自分がどんな病気で入院する可能性が高いのか」を把握しておくことは、安心して透析生活を送るうえでとても大切なことだと思います。
病気のリスクを把握しながら、ご自身や大切な方の体調を見つめ直す小さなきっかけになれば幸いです。
それでは素敵な透析ライフをお過ごしください。

















