2023年の透析医学会による統計調査によると、40%以上の透析患者さんが2023年の間に1回以上の入院を経験していました。

その調査による、透析患者さんの主な入院理由について、記事でまとめています。

しかし、透析患者さんといっても、年齢や治療スタイルは本当にさまざまで、一人ひとり状況が異なります。

2017年の透析医学会の統計調査では、年齢別や治療方法別の入院理由を調査しています。

今回の記事では、透析患者さんが入院する原因となる疾患や入院の頻度を、年代別・透析歴別にしてまとめています。

1年間での入院の有無【年代別】

わが国の慢性透析療法の現況(2017 年 12 月 31 日現在)
  • 透析患者さんは、比較的若い60歳未満の患者さんでも、約30%が年に1回以上の入院を経験していました。
  • 当然ですが、年齢層が上がるにつれて、入院するリスクは上がっているようです。

入院理由【年代別】

わが国の慢性透析療法の現況(2017 年 12 月 31 日現在)

全ての年代で、共通している主な入院理由は

透析患者さんの入院理由TOP3

  1. バスキュラーアクセス
  2. 心疾患
  3. 感染症

この3つはすべての年代で上位3つに入っています。

ちなみに、日本人全体での入院理由TOP3は以下のようです。

日本人全体の入院理由TOP3(2023年)

  1. 統合失調症など精神疾患
  2. 脳血管疾患
  3. がん

厚生労働省「患者調査」より

透析患者さんと日本人全体の入院理由を比べると、上位3つの理由がすべて違う理由になっています。

シャントトラブルや心疾患、感染症などは、透析患者さんには特に多くみられる症状と言えます。

45歳未満の透析患者さんの入院理由

  1. バスキュラーアクセス(33.0%)
  2. 心疾患(14.2%)
  3. 感染症(13.3%)

若年層の患者さんの特徴をまとめてみます。

「慢性期疾患」の入院理由が少ない

入院理由にはシャントトラブルや感染症といった、いわゆる急性期寄りの疾患の割合が多いようです。

そんな中でも心不全の割合は14.2%と高くなっています。

社会復帰している患者さんにとって、飲水制限は大きな敵と言えますね。

全年代の中で腎移植は最多

45歳~60歳の透析患者さんの入院理由

  1. バスキュラーアクセス(27.2%)
  2. 心疾患(22.5%)
  3. 感染症(9.9%)
  4. 整形外科疾患(7.5%)
  5. 大動脈・末梢血管疾患(6.1%)
  6. 脳血管疾患(5.1%)

中年層の患者さんの特徴をまとめてみます。

「生活習慣病由来」の入院理由が増えてきている

心疾患、大動脈・末梢血管疾患、脳血管疾患といった、いわゆる「生活習慣病」に由来する入院理由が増えてきています。

透析患者さんに限った話ではありませんが、生活習慣を見直さなければいけない年代ですね。

60歳~75歳の透析患者さんの入院理由

  1. バスキュラーアクセス(24.4%)
  2. 心疾患(23.4%)
  3. 感染症(10.9%)
  4. 整形外科疾患(9.7%)
  5. 大動脈・末梢血管疾患(7.0%)
  6. 脳血管疾患(5.8%)

高齢層の患者さんの特徴をまとめてみます。

「生活習慣病由来」の入院理由が多い

心臓・血管・脳に関わる病気による入院理由が全年齢層の中で最も多くなっています。

「がん」による入院理由も増加

非透析患者さんと同様、この年代ではがんの発見も増えているようです。

定期的な検診で、早期発見・早期治療を目指しましょう。

「腎移植」の割合の低下

この年代での腎移植による入院の割合は0.1%と非常に少なくなっています。

この年代は本来まだ移植を目指せる時期だと思いますが、一般的には移植の選択肢がほとんど閉ざされているように見えます。

75歳以上の透析患者さんの入院理由

  1. バスキュラーアクセス(24.5%)
  2. 心疾患(20.0%)
  3. 感染症(11.3%)
  4. 整形外科疾患(11.0%)
  5. 大動脈・末梢血管疾患(5.5%)
  6. 脳血管疾患(5.5%)

後期高齢層の患者さんの特徴をまとめてみます。

整形外科疾患の割合増加

後期高齢層になると、転倒による骨折が増えてきます。

透析患者さんの場合、転倒による骨折は、長期入院のリスクとなります。

そして長期入院により、

  • 体力・機能の低下
  • 認知機能の低下
  • せん妄
  • 社会復帰の困難

など、状況がどんどん悪化してしまう流れに入りやすくなります。

日頃から転倒のリスクには充分に備えておきましょう。

感染症の割合増加

整形外科疾患とともにこの年代で増加するのが「感染症」です。

透析患者さんの死亡原因で最も多いのが感染症。

その中でも「誤嚥性肺炎」による死亡理由が最も多いとされています。

透析歴と入院の関係

わが国の慢性透析療法の現況(2017 年 12 月 31 日現在)

透析歴と入院の割合の関係を示したグラフです。

見事にU字カーブを描いていますね。

透析導入直後の不安定さ

  • 導入期の合併症(シャントトラブル、心不全)
  • 基礎疾患が重い状態で透析導入されることが多い
  • 生活リズムや食事管理がまだ整わない

この時期は、体がまだ透析に慣れておらず、急性期の問題が起こりやすい時期であり、入院の割合が多くなってしまっているようです。

透析にも生活にも慣れる安定期

透析生活や自己管理にも慣れてきて、徐々に入院の割合が落ち着いてきます。

透析患者さんによっては、新人の透析スタッフに透析について講義をしてくれる患者さんもいるくらいです。

長期透析による高齢化とのダメージ蓄積

透析歴が長くなると、その分、歳も重ねることになります。

すると加齢によって当然入院のリスクは上がっていきます。

他にも、

  • アミロイドーシスや骨粗しょう症による関節痛・骨折
  • 栄養状態の悪化(サルコペニア・フレイル)
  • 長期透析による血管の石灰化

など、透析を長期間続けることによるダメージの蓄積によって、入院の割合は増えていきます

安心して透析生活を送るために

透析患者さんに限らず、入院は生きていれば皆が経験するものです。

自分の年齢や環境によって、入院する理由は様々です。

「自分がどんな病気で入院する可能性が高いのか」を把握しておくことは、安心して透析生活を送るうえでとても大切なことだと思います。

年齢によって入院するリスクや理由は変化していきます。

病気のリスクを把握しながら、ご自身や大切な方の体調を見つめ直す小さなきっかけになれば幸いです。

それでは素敵な透析ライフをお過ごしください。

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佐藤さん
病院に勤めて15年。 様々な患者や医師、看護師などの医療関係者と関わってきました。 透析の話を中心に、病気の話、患者の話、スタッフの話、病院内での様々な話を投稿したいと思っています。