2023年の透析医学会による統計調査によると、透析患者さんの約4割が1年間に1回以上の入院を経験しています。

入院の主な理由としては、

  • バスキュラーアクセス(内シャントなど)に関連するトラブル
  • 心疾患
  • 感染症
  • 整形外科的な疾患

などが挙げられます。

この記事では、透析患者さんが入院する主な原因について、最新のデータをもとにご紹介します。

2023年:透析患者さんが入院した理由は?

透析医学会では、2023年に透析患者さんの入院状況について調査しています。

わが国の慢性透析療法の現況(2023 年 12 月 31 日現在)

この調査によると、透析患者さんの主な入院理由は以下になります。

透析患者さんの入院理由

  1. バスキュラーアクセス(シャントなど)関連
  2. 心疾患
  3. 感染症
  4. 整形外科疾患

バスキュラーアクセス(シャントなど)関連

入院理由として最も多かったのがいわゆるシャント関連の入院です。

透析患者さんにとって命綱ともいえるシャントですが、どのようなトラブルが入院につながるのかについても、透析医学会が詳しいデータを公表してくれています。

わが国の慢性透析療法の現況(2023 年 12 月 31 日現在)

シャント閉塞・狭窄

最も多いトラブルは、やはりシャント閉塞や狭窄ということでした。

シャント狭窄もしくは閉塞

  • 透析を長く続けていると、経験された方も多いと思いますが、経皮的血管形成術(PTA)によって、シャントの閉塞や狭窄を改善します。
  • 局所麻酔で患者さんは起きた状態で手術を進めます。
  • 多くの場合、日帰り入院も可能です。
  • 拘束時間と痛みは伴いますが、実績は豊富で、安全性は高く、身体への負担は低い治療です。

シャントや人工血管の増設もしくは再建

腹膜透析の患者さんが、血液透析に移行するタイミングや、PTAでシャントの閉塞が改善されなかった場合に、シャントや人工血管の増設もしくは再建が行われます。

シャントや人工血管の増設もしくは再建

  • 手術によって、シャントや人工血管を増設もしくは再建します。
  • PTAと同様、局所麻酔で患者さんは起きた状態で手術が行われることが多いです。
  • シャント作成後、2週間~3週間後に穿刺可能となるため、それまでは入院が必要になります。
  • シャント作成後はトラブルも多く、入院が長期化することもあります。

シャント閉塞に関しては、早期発見によって血流の改善率が変わってくるので、毎朝シャントの音を聞いて、早期発見・早期治療に努めてください。

バスキュラーアクセス感染

透析患者さんにとって、シャントの感染も重症化する恐れのある、恐い合併症です。

バスキュラーアクセス感染

  • 人工血管や長期留置カテーテルを使用している患者さんは、感染によって重症化することがあります。その場合、人工血管やカテーテルは抜去する必要があります。
  • 感染が重症化すると命に関わる場合もあります。普段からシャントの観察は意識してください。

心疾患

入院理由として2番目に多かったのが心疾患の入院です。

わが国の慢性透析療法の現況(2023 年 12 月 31 日現在)

それぞれの入院理由の解説は以下です。

心不全

  • 心臓のポンプとしての機能が弱くなる病気。
  • EF:心臓がポンプとしての役割をどれだけ果たせているかの指標

冠動脈インターベンション(PCI)/ 冠動脈バイパス術(CABG)/冠動脈イベント

  • 心臓の周りを走る血管(冠動脈)が詰まる病気
  • 結果として、心臓の筋肉に酸素が送られなくなり、心臓の機能が低下する
冠動脈の走行

弁膜症

  • 心臓の部屋の出口に付いている弁が正しく動作しなくなる病気
  • 弁が閉じなくなることを「閉鎖不全症」という
  • 弁が開かなくなることを「狭窄症」という

不整脈関連

  • 心臓が正しいリズムで拍動しなくなる病気
  • 心臓が動かなくなることを「徐脈」という
  • 心臓が速く動きすぎることを「頻拍」という
  • 心臓が震えだすことを「細動」という

2023年の統計調査で、心疾患による透析患者さんの入院理由として最も多かったのは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)ということでした。

PCIの場合、心筋梗塞や狭心症などの、血管が詰まる病気が適応になります。

治療の影響などもあり、透析患者さんは「血管が詰まりやすい」ということは明らかになっています。

以下のような心臓に関する定期検査をしっかり受けて、早期発見に努めてください。

  • 12誘導心電図
  • 心エコー
  • 心臓CT など

感染症

入院理由として3番目に多かったのが感染症です。

2023年は新型コロナウイルスの影響もあった年でした。

ただし、

  • 2017年の統計調査でも、入院理由として感染症は上位だったこと
  • 透析患者さんの死亡原因としては感染症が最も多いこと

を考慮すると、新型コロナウイルスの影響を除いた場合でも、透析患者さんの入院理由として感染症が多いことは、明らかな傾向といえます。

わが国の慢性透析療法の現況(2023 年 12 月 31 日現在)

細かい分類で見ると、新型コロナウイルスを除けば、呼吸器感染(肺炎など)が最も多くなっています。

感染症の予防には、日々の衛生管理や体調の変化への注意が欠かせません。

ただし、どれほど気をつけていても、体の抵抗力や環境の影響などにより、感染してしまう可能性はゼロではありません。

そのため、「予防しているから大丈夫」と思わずに、早めの受診や体調の変化に気づくことが大切です

特に透析患者さんは、感染が重症化しやすい傾向があるため、少しの異変でも医療機関に相談することが安心につながります。

整形外科疾患

入院理由として4番目に多かったのが整形外科疾患です。

わが国の慢性透析療法の現況(2023 年 12 月 31 日現在)

細かい分類を見ると、ダントツで骨折が多いことが分かります。

透析患者さんに骨折が多い理由として、以下が挙げられます。

透析患者さんに骨折が多い理由

  • リン・カルシウムのバランスで骨が脆くなりやすい
  • 透析後のふらつきによる転倒
  • 緑内障・白内障による視界不良で転倒してしまう

特に大腿骨近位部(太ももの付け根のあたり)の骨折は、入院が長期化しやすくなります。

入院の長期化は、重要なリスクをいくつも抱えています。

入院の長期化によるリスク

  • 認知機能の低下
  • せん妄
  • 筋力の低下
  • 社会復帰困難

これらを防ぐために大事なのは、定期的な検診と、転倒予防です。

  • 骨密度の検査を定期的に受ける
  • 転倒のリスクを下げる環境づくり

出来ることから取り組んで、少しでも骨折のリスクを下げるようにしてください。

様々な合併症に立ち向かっている透析患者さん

私がこれまで勤務してきた医療現場でも、この記事で取り上げたような理由によって入院される透析患者さんが多くいらっしゃいました。

透析を受けている方々は、ここで紹介した4つの代表的な合併症に加えて、他にもさまざまな合併症のリスクと日々向き合っています。

これらの合併症に対しては、定期的な検診や日常生活での予防・早期発見が基本となりますが、すべての病気に常に注意を払い続けるのは、簡単なことではありません。

だからこそ、よく見られる合併症について知っておくことが、日々の体調管理や受診のタイミングを考えるうえでのヒントになってくれれば幸いです。

それでは素敵な透析ライフをお過ごしください。

ABOUT ME
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佐藤さん
病院に勤めて15年。 様々な患者や医師、看護師などの医療関係者と関わってきました。 透析の話を中心に、病気の話、患者の話、スタッフの話、病院内での様々な話を投稿したいと思っています。