透析中さむくない?透析液温度を変えてみよう

透析中に「寒い!」と感じたことはありませんか?
逆に「今日は暑いなぁ」と感じたこともあるかもしれません。
透析室は、スタッフが動いているのに対し、患者さんは動くことが出来ないので、
患者さんが「寒い」と感じていても
スタッフは「暑い」と感じていることが良くあります。
また、他にも多くの患者さんがいるので、スタッフにお願いしても空調の温度を変更してくれない場合もあると思います。
そんな時は透析液の温度を変更してみても良いかもしれません。
今回は透析液の温度についてまとめてみました。

透析液って何?
まずは透析液について軽く解説します。
透析液は、ダイアライザーに流れている透明な液体のことを言います。(下図)

この透析液には、ナトリウムやカリウム、カルシウムやリンなど、電解質と呼ばれるミネラルが入っています。透析液内の電解質は、ほぼ血中での正常値の範囲に収まるような組成になっています。
透析患者さんは、腎臓の機能が低下しているため、血中の電解質のバランスが崩れていたり、本来は尿として排出されるはずの老廃物が溜まっています。
そのような場合に、ダイアライザーの中で血液と透析液が(半透膜を介して)触れ合うことで、血液内の電解質が、透析液の電解質の値と近い値に調整されたり、老廃物を捨てることが出来るのです。
つまり、ダイアライザーの中に透析液が流れなければ、透析は出来ないのです。
しかし、透析液にはもう一つ役割があります。
それが、「血液を温める役割」です。
血液を温める理由
透析は、「体外循環」といって、血液を体の外に出して行う治療です。
通常、血液の温度は37℃程度です。それに対して透析室の室温は、18℃~28℃程度に設定されていると思います。血液温に比べて、室温は低くなっているため、体の外に出た血液は、外気に触れて冷たくなってしまいます。
もし、血液の温度が冷たいまま体に血液が帰ってしまうと、1分間に200ml~300mlもの冷たい血液が体内に入ってくることになります。そうなると、寒さによって、患者さんは悪寒や寒気を感じたり、手の先や足の先にしびれや痛みが出てしまうことがあります。
そのため、ダイアライザーの中で血液を温める必要があり、透析液を温めて使っているのです。

透析液の温度は何度に設定されている?
透析液の温度は大体36.0℃~36.5℃に設定されていることが多いです。
しかし、ダイアライザー内で血液が温められたとしても、その後も血液は外気にさらされることになります。そのため、体内に戻るころには、ダイアライザー内で温められた温度よりも冷えてしまっていることが多いのです。

そのため、体内に戻ってくる血液の温度は、設定している透析液温度よりも低くなって戻ってきてしまいます。
例えば、透析液温を36.0℃に設定しても、体に戻ってくる血液の温度はそれより低くなっています。
どれくらい温度が下がって戻ってくるかは、血液流量や外気温にも左右されます。
当然ですが透析室が寒ければ寒いほど、血液は冷えて戻ってきます。
また、血液流量が遅くても、外の空気に触れている時間が長くなるため、血液は冷えて体に戻ってきます。
透析液温が低い時のメリット・デメリット
それでは透析液温度はどれくらいに設定すると良いのでしょうか。
まずは透析液温が低い場合のメリットとデメリットを考えます。
なお、ここでは透析液温が低い=35.5℃以下として考えています。
透析液温が低い場合のメリット
- 血圧が下がりにくい
血圧が低い患者さんに対し、透析液の温度を下げると血圧が下がりにくいということは多くの論文で明らかにされています。低温透析といって、ガイドラインにも載っている方法です。
透析液温が低い場合のデメリット
- 悪寒、寒気
- 手の先や足の先にしびれや痛み
- 穿刺部分の痛み
- 血液の粘性が上がり、回路凝固などのリスクが上がる
透析液温が低いと、当然ですが患者さんは悪寒や寒気を感じます。
さらに寒いと血管が収縮してしまい、手の先や足の先まで血液が届かなくなってしまいます。その結果、手足の末端に痛みやしびれが出たり、穿刺部分に痛みが出ることもあります。
また、血液は冷たいとドロドロしてしまう性質を持っているため、回路内で血液が固まってしまったり、体内で血液の凝集がおきてしまうリスクもあります。

透析液温が高い時のメリット・デメリット
次に、透析液温が高い時のメリットとデメリットを考えます。
なお、ここでは透析液温が高い=37.0~37.5℃として考えています。
透析液温が高い場合のメリット
- 穿刺部痛の緩和
痛みに対しての緩和方法として、温熱効果というものがあります。要は温めると痛みが少し和らぎますよという効果なのですが、透析液温度を高くすることで、穿刺部の痛みが緩和するという研究も発表されています。1)
透析液温が高い場合のデメリット
- 低血圧の場合、血圧が維持できない可能性がある
低温透析では、血圧の維持ができるとされているので、透析液温が高ければ当然血圧の維持は出来なくなります。
ただし、低温透析は血圧が維持できない患者さんの血圧維持に使用されるものであり、透析液温度が高いと血圧が下がるということではないので注意してください。

ECUMは透析液が流れない
ECUMという治療をご存知でしょうか。
もし知らなければ読み飛ばしていただいて差し支えありません。
ECUMは、血液の浄化(電解質の補正や老廃物の除去)を行わずに、除水(余分な水を捨てる)のみ行う治療です。
このECUMではダイアライザーに透析液は流れません。
そのため、血液は温められることなく、体内に戻っていきます。
ECUMで水引だけを行っている患者さんも見かけますが、ECUM時に寒いと感じたら、温度の調整が行われていないためなので、お布団を追加してもらったり、ECUMを止めて通常の透析にしてもらったり、何かしらの対策をとっていただければと思います。
透析液温度は気軽に変更できます
透析液の温度は医師の指示も必要なく、機械の設定を変えるだけで気軽に変更できる透析条件です。
透析中に寒かったり暑かったりした場合には、遠慮なくスタッフに声をかけてください。
具体的に
37.0℃にして
などと伝えていただけると、スタッフ側も気軽に設定変更できます。
外の気温によっても戻ってくる血液の温度は変わってくるので、季節によっても希望する透析液の温度は変わってくると思います。
ご自身の過ごしやすい透析液の温度を見つけてみてください。
ただし、私としては、血圧を維持するための低温透析はお勧めはしません。
透析液温を下げて透析すると、体に負担がかかるのはもちろんですが、透析の効率が落ちる可能性があるという研究結果もいくつか出ています。なるべく温かめに設定してあげたほうが、体への負担は少ないと思います。
それでは、素敵な透析ライフをお過ごしください。

参考文献
1)S.MIyata The influence of the dialytic fluid temperature on the temperature of blood and pain of the upper limb on needle prick.透析会誌45(3):255~259,2012
これはCTAサンプルです。
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