透析は、「生命維持管理装置」と呼ばれる装置に分類されます。

その名の通り、透析装置は生命を維持するための装置であり、病気を治すための装置ではありません。

現在、日本の医療現場においては、腎機能が低下してさえいれば、主治医はどんな状態の患者さんでも透析の導入を提案します。

治療の提案の仕方として

「透析をしなければいけない状態です」

「透析をしなければ近いうちに亡くなってしまいます」

というような、ご家族にとっては透析導入を否定するのが難しく、さらに透析が助けになるかもしれないと期待を抱かせるような提案の仕方が多いと感じます。

そのような提案を受けてしまったら、ご家族としてはほぼ透析の導入に頼るしか手立てがなくなってしまうと思います。

しかし、ICUなどにいる重症患者さんに対しての透析導入は、患者さん本人にただ苦痛を与えるだけの結果になることがあります。特にご高齢の患者さんや、元々の体力が低下してしまっている患者さんに透析が導入された場合、ただ苦しそうに透析をして、状態が回復されない患者さんもいらっしゃいます。

そして、重症患者さんに対する透析の導入は、そこまで珍しいことではないのです。

なぜそのような結果になってしまうのか、病院の内情とともにまとめてみました。

透析はつらい!

まず最初に伝えたいことは、「透析という治療はつらい!」ということです。

社会復帰をされて、バリバリのお仕事をされているような患者さんでも、透析の後は疲れてつらそうにしている患者さんがたくさんいます。

そんな透析の治療を、重症でICUに入っている患者さんに行うことは、ご本人にとって大変な負担になります。

血圧が下がってさらに状態が悪くなったり、痛み止めなどの薬が透析で除去されて、痛みがひどくなってベット上で暴れてしまったりします。

暴れてしまうと、透析が続けられないのでベット上に固定されて動けないようにして透析を続けることになります。(もちろん拘束の同意はとります)

その状態を見ていると、ご家族は本当にこの治療を望んでるのかなと感じます。

ご家族はこの状態を見ることが出来ないから透析を続けているだけなのではないかなと思ってしまいます。

現在の医学では、一人の医師がすべての病気を網羅することは現実的ではありません。診療科も細かく分かれているため、透析を専門としない医師が透析の細部まで理解していることは多くないのが現実です。

そのため、専門外の医師には「透析のつらさ」が届きにくい状態になっていることも事実です。

重症患者さんが透析導入に至るまでの流れ

どんな病気からでも透析導入になる可能性はあります。

肺炎が重症化し、結果として透析を行うことになるケースを取り上げ、病院の中でどんな流れでその判断が生まれるのかをご紹介します。

あくまで一例ですのでご了承ください。重症化したすべてのケースで透析が導入されるわけではありません。むしろ肺炎から透析導入まで至るケースは稀です。

肺炎で入院
まずは主治医は「呼吸器内科」です。
重症化してICUへ
ここでは主治医は呼吸器内科のままです。
(場合によっては変更されることもあります。)
腎機能の悪化
回復を認めず、治療が長引いていくと、血圧の低下や薬の副作用などで腎機能が悪化することがあります。
腎臓内科に相談
腎臓内科に相談が入り、肺炎の治療と併せて、腎臓に対する治療が行われます。
ご家族に報告
ご家族にも腎臓に対する治療を行う旨が伝えられます。
説明は主治医である「呼吸器内科」から伝えられます。
透析が必要なレベルまで腎機能が悪化
患者さんの体力や、元々の腎機能によっては、透析が必要なレベルまで腎機能が悪化することもあります。
ご家族に報告
ご家族にも透析が必要なレベルになってしまったことが伝えられます。
説明は主治医である「呼吸器内科」から伝えられます。
透析の導入
ご家族からの了解を得られれば、透析の導入になります。

ここで伝えたいことは、透析についてのご家族への説明は、主治医が担当するということです。

しかし、透析という治療について専門外である医師からの説明になると、透析によるデメリットや透析のつらさというのは当然伝わりにくくなってしまいます。

そのため、ご家族も主治医も、透析の大変さを十分に理解しきれないまま、透析が始まってしまうケースが実際によくあります。

ただし、患者さんのことを一番よく理解しているのは主治医で、いろいろな医師が関わると説明がどうしても入り組んでしまうため、主治医が説明を行うのは当然のことです。そのシステムは変更するべきではありません。

ICU退室=回復ではないこともある

医師は、患者さんの命を救うために治療のプランを立ててくれています。

重症患者さんにも透析を導入することは正しい治療です。

透析が導入されて治療がうまく進み、自分で歩けるくらいまで回復して退院までしてくれていればとても喜ばしいことです。もちろんそのようなケースもたくさんあります。

しかし、現実問題として、治療を終えた患者さんは皆が元気に退院できるわけではありません。

  • 意識がない
  • 意識はあるが、自力ではほぼ動けない
  • 認知機能の低下(透析をしていることが理解できない)

このような状態でICUを出て、退院していく患者さんもたくさん見てきました。

その後の外来透析の様子まで見届けることもたくさんありましたが、やはりつらそうで、この治療を継続するのが本当に正しいのか疑問に思ってしまうことがあります。

答えはないけど

この疑問に答えはないと思いますし、考えるべきでもないと思います。

しかし、透析を導入することになった場合、本人にとって本当につらい治療だということをご家族の方が少しでも知ってくれると良いなと思います。

また、透析の治療は拒否することができるということも覚えておいて欲しいと思います。

医師は助けるために治療の説明をしますが、その治療が本人にとってどれだけつらいかという説明はあまりされません。

治療のつらさを知らずに、命と治療の2択を迫られたら命を取るに決まっています。

しかし、透析をすることで本当に回復する見込みがあるのか。

治療が終わったとして、患者さんにどれくらいの障害が残ってしまうのか。

そんなことを聞く余裕はないかもしれませんが、可能であれば、主治医にたくさん質問して、患者さんの状態や治療の内容について、色々なこと知ったうえで、しっかり考えて選択をしてほしいなと思います。

ABOUT ME
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佐藤さん
病院に勤めて15年。 様々な患者や医師、看護師などの医療関係者と関わってきました。 透析の話を中心に、病気の話、患者の話、スタッフの話、病院内での様々な話を投稿したいと思っています。
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