在宅透析とは、その名の通り、「家で行う透析」のことです。

在宅透析には

  • 在宅血液透析
  • 腹膜透析

の二種類があります。

今回は、在宅血液透析についてまとめてみました。

日本の在宅医療

現在、日本の医療における政策では「在宅医療」に力を入れていると話を聞きます。

在宅医療の種類

  • 在宅酸素療法
  • 在宅人工呼吸療法
  • 在宅中心静脈栄養
  • 在宅透析

これらの在宅医療には診療報酬で加算がつけられていて、国としては在宅での医療を推し進めていると感じます

実際に、訪問診療の件数は年々増えており、2023年には100万人を超えました。

日本における在宅血液透析の現状

しかし、在宅透析に関しては、国の思い通りに増えていない印象をうけます。

2024年の統計によると、日本国内で在宅血液透析を受けている患者さんは767人でした。透析患者さんのうち、在宅血液透析を選択している患者さんは0.2%だそうです。(日本透析医学会統計調査:2024年慢性透析療法の現況より)

ちなみに2024年の統計で、腹膜透析を行っている患者さんは10774人で、透析患者さん全体の3.2%だったようです。

2024年末の透析患者さん総数337,414人
2024年末の在宅血液透析767人(0.2%)
2024年末の腹膜透析10,774人(3.2%)

ここ数年で少しずつ増えてきているようですが、透析患者さん全体から見れば、まだまだ少ないと言えるでしょう。

日本在宅血液透析学会HPより転用させていただいています。

在宅血液透析はなぜ増えないのか

在宅透析が増えない理由は、主に患者さんの出費が増えることと、病院の利益が少ないことが原因と言われています。自己管理の難しさも原因の一つとされています。

具体的には以下の理由です。

在宅透析が増えない理由

  1. 透析のために電気・給排水の工事が必要。費用は自己負担。
  2. 透析にかかる水道代、電気代は自己負担。
  3. 透析の準備や穿刺、機械の操作は自分で行う必要がある。
  4. 在宅血液透析を行っている医療施設が少ない。

給排水管の工事

透析は、治療を行うのに1分間に約500mlも水を使います。

4時間透析では約120L、5時間透析では約150L、6時間透析では約180L…

一般的なお風呂に入る水の量が150L~200L程度なので、同じくらいの水を使用します。

この水は、キッチン下や洗面所の給排水管を利用して使用します。そのため、在宅透析を始めるためには、この給排水管の工事が必要になります。

この工事にかかる費用はご本人のご負担になることが多いですが、病院や自治体のサポートが受けられる場合もあるそうです。

この給排水管の工事は平均で約10万円ほどかかります。

電気容量・コンセント形状の変更

透析では、大量の水を温める必要があります。その際にヒーターを使用するため、消費電力が大きくなります。

そのため、一般的な家庭では電気容量が足りず、ブレーカーの電気容量の変更が必要になります。

さらに医療機器である透析の機械は、一般の製品とは電源コンセントの形も違うため、新たにコンセントの差込口を作る必要があります。

これらの工事の費用も自己負担となります。

電気部分の工事は平均で5万円~10万円近くかかります。

そのため、水道工事、電気工事を合わせて、15~30万円近くは必要になります。

電気代・水道代・配送費

透析を行うのに必要な水道代や電気代も自己負担となります。

一般的には在宅透析によって水道・ガス代が1.5倍程度になるようです。

その他、ダイアライザーや透析回路、透析液など、たくさんの医療機器が配送されますが、その配送料が自己負担となることもあります。多くの場合は、病院やメーカーが負担してくれます。

透析の準備や穿刺、機械の操作

通院透析であれば、病院のスタッフが行ってくれる透析の準備や穿刺。

在宅透析ではそれらを自分で行わなければいけません。

実際には難しいものではなく、患者さんに指導してみると、意外とすんなり出来てしまう方が多いです。

しかし、まず最初にやってみようという気持ちにならないのは、患者さんの心理としては仕方ないのかなと思います。

自分で穿刺とかマジ無理~!!

という患者さんはたくさんいらっしゃいます。

しかし、実際に在宅透析を始めて、慣れてくると

自分以外の人に刺されるの少し恐いな。

とまで言う患者さんもいらっしゃいますので、手技に関してはやってみて出来ないことはないと感じています。

在宅血液透析を行っている病院が少ない

実際はこれが一番の原因かもしれません。

在宅血液透析を行っている施設が少ない理由は、病院に利益が少ないからです。

在宅血液透析に対応できる病院が少ない理由

在宅透析を行うには、在宅透析の導入方法をシステム化する必要があります。

トラブル対応や災害時のマニュアル作成など、いざやってみるとかなり大変な作業になります。

しかし、在宅透析を行った場合に医療機関がもらえる診療報酬は、施設での透析と比べて少し高い程度です。

つまり

在宅透析を開始するのに必要な労力>>>診療報酬

という現状で、費用対効果が見合っていないため、在宅血液透析は増えづらいとされています。

しかし、診療報酬は2年に1回改訂されるため、これから在宅透析が増えていく可能性は十分にあります。

在宅血液透析のメリット

在宅血液透析を行う上で一番のメリットは、

健康でいられる時間が延びる!

が一番大きいと思います。

様々な合併症のリスクが下がり、血圧の安定、内服薬の服用頻度の低下など、身体にとって大きなメリットがたくさん出てきます。

患者さんからしてみたら、費用や労力を消費して在宅透析をしているのですから、これくらいのご褒美は当たり前に欲しいですよね。

健康時間が延びる理由

在宅血液透析では、透析をする時間やタイミングを自分で決めることが出来ます。

その結果、在宅血液透析では、透析をしている時間が長くなる特徴があります。

透析をしている時間が増えると、それだけ健康でいられるということは、多くの研究で証明されています。

患者さんの実際の声

印象に残った患者さんの声を一つだけ紹介させていただきます。

仕事が終わって、お風呂、ご飯を済ませてから透析の準備をしていたら、透析が出来る時間なんかほとんどないよ。

施設で透析したほうが長い時間透析できるんじゃないかな。

実際に在宅で透析をやってみると、意外と透析の時間を確保できなかったという患者さんでした。

本来はライフスタイルに合わせて行えるはずの在宅透析ですが、実際にはすべての患者さんがそうできるとは限らないようです。

大変だけど、メリットは大きい在宅透析

在宅血液透析は、費用の面でも労力の面でも、大変な治療方法だと思います。

しかし、それと引き換えに得られるメリットは非常に大きいのではないかなと思います。

以下は2021年度に透析医会が「透析患者さんが透析医療に対して望むこと」を調査した結果です。

透析医会:2021 年度 血液透析患者実態調査報告書より

これらの患者さんの要望のうち、在宅血液透析によって叶えられるものがたくさんあります。

在宅血液透析によって叶えられる要望

  • 長生きしたい
  • リンを下げたい
  • 服薬する薬を減らしてほしい
  • 下肢のイライラを減らしたい
  • 透析時間を長くしてほしい
  • カリウムを下げたい

まずは対応している施設を探してみて

在宅血液透析は対応している施設が非常に少ないです。

日本在宅血液透析学会ホームページの「HHD実施施設一覧」に在宅血液透析に対応している施設が載っています。

もし興味があれば、一度調べてみてくださいね。

それでは素敵な透析ライフをお過ごしください。

ABOUT ME
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佐藤さん
病院に勤めて15年。 様々な患者や医師、看護師などの医療関係者と関わってきました。 透析の話を中心に、病気の話、患者の話、スタッフの話、病院内での様々な話を投稿したいと思っています。