【大動脈弁狭窄症】透析患者さんの合併症を解説【心臓手術】

透析患者さんは、様々な合併症のリスクが高くなります。
その中で、「大動脈弁狭窄症」は透析患者さんの10〜20%程度が合併していると言われています。「大動脈弁」は心臓の中にある大事な大事な存在です。
透析患者さんが大動脈弁狭窄症と診断されたとき、その後の経過は決して良好ではありません。また、突然死のリスクも高いので、非常に危険な病気です。
今回は、「大動脈弁狭窄症」についてまとめてみました。
大動脈弁ってなに?
体の中の血液の流れは
全身→右房→右室→肺→左房→左室→全身→以下繰り返し
という流れです。
この流れの中で、左心室から血液が全身に流れていく部分の扉が大動脈弁です。

大動脈弁狭窄症ってどんな病気?
大動脈弁狭窄症は、大動脈弁という扉が開きづらくなっている状態です。
そのため、心臓がいくら頑張っても、全身に血液を送ることが出来なくなってしまいます。
心臓はポンプで、全身に血液を送ろうとしていますが、出口が狭いので血液を送れない状態をイメージすると分かりやすいと思います。
血中のリンの値が高いと大動脈弁狭窄症になりやすいとされています。
詳しく知りたい方は、Medtronicという医療系デバイスの製造販売をしているメーカーが、大動脈弁狭窄症について分かりやすく解説しているので、ご覧ください。4分ほどの動画です。
大動脈弁狭窄症の治療方法
大動脈弁狭窄症と診断されてしまった場合の治療方法は2パターンです。
大動脈弁狭窄症の治療方法
- 手術(大動脈弁置換術)
- カテーテル治療(TAVI)
①手術(大動脈弁置換術)
大動脈弁置換術の流れは以下のようになります。
- 胸を開く
- 胸の骨を切って心臓を露出させます。
- 人工心肺装着
- 心臓を止めている間、心臓の代わりをする人工心肺という装置を装着します。(画像はWikipediaより)

- 心臓を止める
- カリウムがたくさん入った液を心臓に流し込んで、心臓の動きを止めます。
- 大動脈弁を変える
- 動きが悪くなった大動脈弁を取り除き、「人工弁」と呼ばれる、人工的に作られた大動脈弁を代わりに埋め込みます。(画像は日本臓器学会より)

- 心臓を動かす
- 止まっている心臓を動かします。
- 胸を閉じる
- 開いた胸を、ワイヤーで縛って手術終了です。
術後は1週間ほどICU(集中治療室)で管理になります。透析もICUで受けることになります。
②カテーテル治療(TAVI)
TAVIの流れは以下のようになります。
TAVIについては、Medtronicという会社が分かりやすい動画を作成してくれているため、そちらを参考にした方が分かりやすいかもしれません。
- 足の付け根からカテーテルを挿入
- 足の付け根からカテーテルと呼ばれる直径1cm程度の管を挿入します。
- 心臓(大動脈)まで人工弁を運ぶ
- 足に挿入したカテーテルから人工弁を心臓まで運びます。
- 人工弁を装着
- 心臓まで運んだ人工弁を、大動脈に装着します。
- カテーテルを抜く
- カテーテルを抜いて終了です。
TAVIは傷口が小さく、安静にしている期間は大動脈弁置換術よりも短く済みます。
順調にいけば1週間ほどで退院できます。
治療方法~それぞれの特徴~
手術とカテーテルについて、それぞれの特徴をまとめます。
大動脈弁置換術のメリット・デメリット
メリット
- 耐久性のある弁(機械弁)が使える
- 歴史が長く、手技が一般化している
デメリット
- 侵襲度が高い(確実に痛い)
- 術後の安静度が長い
大動脈弁置換術は、昔から行われてきた手術であり、手技が一般化しています。
そのため、大動脈弁置換術のみであれば、安定した治療成績が残っています。
TAVIのメリット・デメリット
メリット
- 侵襲度が低い(手術に比べれば痛みはずっと少ない)
- 入院期間が短い
デメリット
- 使用できる人工弁の耐久年数が低い
- 比較的新しい治療であり、長期的なデータが少ない
- そもそもTAVIを行うことの出来る医療機関が限られている
TAVIは、傷口が小さく、患者さんへの侵襲度は非常に低いのが特徴です。
しかし、この治療の歴史自体は浅く、長期的な術後経過のデータはまだ不明な部分が多いのが現状です。
非透析患者さんであれば、人工弁の耐用年数は15年程度とされていますが、透析患者さんの場合は劣化が速くなるとも言われています。
手術とカテーテルはどっちを選ぶべき?
非透析患者さんに対しては、「75歳未満は手術、80歳以上はTAVIを優先」とされています。
しかし、透析患者さんに対して治療を行う場合については、医学的な結論は出ていないのが現状です。
それを踏まえて、私の考えになりますが、
【まずはTAVI。TAVIで埋め込んだ人工弁の劣化が進んでしまったら手術】
が基本だと思っています。
もちろん、患者さんそれぞれで症状や条件が異なりますので、主治医の医師としっかりと話して、メリット・デメリットを踏まえて結論を出すことが大事です。
心臓の治療は病院をしっかり選んで!
手術にしろカテーテルにしろ、心臓の治療は命と直結する、とても大事な手術です。
私自身、何件も心臓手術に立ち会ってきましたが、医師の技術はとても重要な要素だと感じます。
病院のホームページをしっかりと確認し、心臓手術の症例数が多い病院を選ぶようにしてください。
年間50例~100例くらいは手術をこなしていた方が良いと思います。
心臓超音波検査(心エコー)をしっかり受けて
これまでに大動脈弁狭窄症についてまとめましたが、最も大事なのは、早期発見・早期治療です。
透析患者さんの大動脈弁狭窄症で、治療を行わないと、生きられる時間が短くなることは証明されています。また、突然死のリスクも高くなるので、非常に危険な病気です。
大動脈弁狭窄症などの心臓の病気は、心臓超音波検査で発見することが出来ます。
透析患者さんに多い合併症のうち、心臓超音波検査で発見できる病気はとても多いのです。
面倒くさがらず、少なくとも年に一度は受けるようにしてください。
それでは素敵な透析ライフをお過ごしください。

















