【心房細動】透析患者さんの合併症を透析患者さんのために解説

透析患者さんは、様々な合併症のリスクが高くなります。
その中で、「心房細動」は透析患者さんの10%程度が合併していると言われています。
今回は、「心房細動」についてまとめてみました。
心房ってどこ?心室ってどこ?
心臓には以下の4つの部屋があります。
心臓の部屋
- 右心房
- 右心室
- 左心房
- 左心室
この4つの部屋のうち、「右心房」と「左心房」の2部屋を心房と呼んでいます。

また、「右心室」と「左心室」を2部屋を心室と呼んでいます。

心房と心室の違い
血液の流れは
右心房→右心室→肺→左心房→左心室→全身→右心房に戻る
です。
つまり、肺や全身に血液を送るのは心室の役割になります。
そのため、心室に異常が起こると、致死的な症状になり得ます。
それに対して心房には異常が起きても、すぐに致死的な症状が出ることはありません。
Point
ドラマや漫画でよく出る
心室細動(Vf)だ!
除細動器持ってきて!早く!!急げ!!!
というシーンは、「心室」で細動が起きているので、命の危険を伴う緊急性の高いシーンです。
それに対して、「心房」で細動が起きる心房細動では、すぐに致死的な状況になることはありません。
ただし、心房細動では、心房が震えてしまうことにより、心室の動きも不規則になります。
そのため、動悸を感じたり息切れなどの症状が出る場合があります。
心房細動ってどんな症状?
心臓は普段、規則的な動きをしています。
しかし、心房細動になると、その字の通り、心房が細かく振動します。
心房細動については、日本不整脈学会という団体から、分かりやすい動画が出ています。
3分半程度の短い動画なので、ぜひご覧ください。
https://share.google/eZbPZoIgxKXAFPeg8
心房細動は何が怖い?
心房細動になったからといって、すぐに何か症状が出るわけではありません。
- 心房細動になる
- 何らかの原因で、心房細動になると、心房の動きに規則性がなくなり、細かく震えだします。

- 心房内に血栓ができる
- 心房が細かく震えていると、血液をうまく押し出せないため、心房内で血の流れが止まってしまいます。
血の流れが止まったままだと、血液がかたまりになってしまい、「血栓」という小さなかたまりができることがあります。
- 血栓が血液の流れに乗って頭の血管へ…
- 血栓は、血液の流れに乗り、身体の様々な部分に運ばれていくことになります。
血栓が運ばれていく先によっては、体に影響が出ないこともあります。しかし、それが頭の血管に入り込んで詰まってしまうと、「脳梗塞」という重い病気になり、命に関わることもあります。
心房細動では、他にも心不全のリスクや認知症のリスクを高めるとも言われています。
心房細動の治療【透析患者さんの場合】
心房細動の治療は大きく3パターンに分けられます。
心房細動の治療
- 薬の内服(血液サラサラ)
- 薬の内服(心房の動きを整える)
- アブレーション治療
①薬の内服(血液サラサラ)
抗凝固療法と呼ばれます。これは、ワーファリンやDOACという、血栓が出来にくくなる薬を内服します。
非透析患者に対しては、第一選択となり得る治療ですが、透析患者さんの場合は治療に対する効果に信頼性がありません。
さらに、透析でヘパリンなどを使用しているため、出血のリスクも増えるとされています。
そのため、透析患者さんに対する抗凝固療法は、慎重な投与が必要と言われています。
参考文献:Königsbrügge O, et al. Atrial fibrillation in patients with end-stage renaldi sease on hemodialysis:magnitude of the problem and new approach to oral anticoagulation. Res Pract Thromb Haemost 2019;3:578-88.
②薬の内服(心房の動きを整える)
心房細動による動悸を抑えたり(レートコントロール)、心房細動自体を抑える(リズムコントロール)薬を使用します。
こちらの薬も、透析患者さんに対して効果があるのか、エビデンスがはっきりしていません。
血中の濃度コントロールも難しく、透析患者さんに対する使用はかなり慎重になる必要があるとされています。
参考文献:Gelder I, Hagens EV, Bosker AH, et al. : A comparison of rate control and rhythm control in patients with recurrent persistent atrial fibrillation. Engl J Med 2002; 347(23): 1834-1840.
③アブレーション
足の血管から心臓までカテーテルと呼ばれる管を通し、直接心臓にアプローチして、心房が震えないように物理的に心房細動を治療します。
具体的にすることは
- ラジオ波と呼ばれる高周波で心房の一部を焼く
- 液体窒素を使用して心房の一部を凍らせる
文字にすると恐ろしいですが、カテーテルによる治療なので、傷口も少なく、外科手術などに比べれば負担は小さい治療です。
アブレーションによる治療では、治療後に心房細動が再発することがあります。その際は、再度アブレーションを行うことになります。
透析患者さんでは、この心房細動の再発が非透析患者さんより多いという報告があります。
ただし、アブレーションを何度か行えば、再発の危険は少なくなるとされています。
そのため、透析患者さんに対しては、このアブレーション治療が第一選択になり得るとしている報告もあります。
参考文献:小堀敦志,高橋 淳,桑原大志,他:慢性維持透析患者における心房細動カテーテルアブレーション治療.心電図2012; 32:333-339.
※左心耳閉鎖術、MAZE手術という治療方法もありますが、そこまで一般的ではないと感じるため、今回は割愛させていただきます。
心房細動と診断されたときの病院選び
どの治療方法を行うにしても、専門的な治療になります。
そのため、心房細動と診断されたら、可能であれば不整脈を専門に治療している医者を探して受診することをお勧めします。
不整脈の治療は循環器内科が行いますが、循環器内科の治療の中でも、アブレーションなどは専門性の高い治療になります。
病院のホームページを確認して、「不整脈外来」があることや、「アブレーション治療の実績」が年間100件以上あると安心です。
心房細動の見分けポイント
心房細動は、自覚症状がない場合も多く、発見が難しいこともある病気です。
心房細動には2つのパターンがあります。
心房細動のパターン
- ずっと心房細動
- たまに心房細動(発作性心房細動)
「たまに心房細動(発作性心房細動)」の場合などは、特に発見が難しくなります。
そのため、心房細動の確認は、自分で脈を測って確認する必要がありますが、一般の方が脈を確認するのはなかなか難しいと思います。
しかし、透析患者さんは内シャント、人工血管、動脈表在化といったバスキュラーアクセスをお持ちです。
これらのバスキュラーアクセスによって、脈の確認は簡単に行うことが出来ます。
内シャントや人工血管を使用している患者さん
普段からシャントや人工血管のシャント音を確認していると思います。
もし確認をしていないという方がいれば、確認するようにしてください。
シャント音が規則的であれば、心房細動ではありません。
しかし、シャント音が不規則であれば、心房細動の可能性があります。
心房細動ではなくても、何らかの不整脈ではあるので、必ず循環器内科を受診してください。可能であれば、不整脈外来へお願いします。
シャント音がこの音のように規則的ではなかったら、受診をお願いします。
動脈表在化を使用している患者さん
普段、表在化されている動脈を触ることはないと思います。
朝起きたとき、表在化されている動脈に触れる習慣をつけてみてください。
拍動を感じることが出来ると思います。
その拍動が規則的であれば、心臓は正常な動きをしています。
拍動が不規則であれば、心房細動の可能性があります。
心房細動ではなくても、何らかの不整脈ではあるので、必ず循環器内科を受診してください。可能であれば、不整脈外来へお願いします。
心房細動は病院選びが大切
心房細動は、透析患者さんに多い病気ですが、いまだに適切な治療戦略が議論されているのが現状です。
透析患者さん+心房細動ということになると、治療は慎重に行う必要があります。
そのため、病院選びは非常に大切になると思います。
病院のホームページしっかり確認して、不整脈治療の実績が多い病院を選択するようにしてください。
後悔のない病院選びをお願いします。
それでは素敵な透析ライフをお過ごしください。
















