透析医学会による2024年の統計調査では、感染症は透析患者さんの死亡率で1位となっていました。

わが国の慢性透析療法の現況(2024 年 12 月 31 日現在)を一部改変

2021年から死亡原因第一位に

透析患者さんの死亡原因として感染症が第一位になったのは、2021年のことです。

それまでは「心不全」が死亡原因としては第一位となっていました。

わが国の慢性透析療法の現況(2024 年 12 月 31 日現在)

上の図は透析医学会による2024年の統計調査による、これまでの透析患者さんの死亡原因の推移です。

感染症以外の死亡原因は右肩下がりになっているのに対し、感染症のみが年々増加していることが分かります。

※上記グラフには表記されていませんが、厳密には死亡原因として「悪液質/尿毒症/老衰等」も増加傾向にあります。

2024年の透析患者さん死亡原因

なぜ死亡原因として感染症の割合が増えているのか

この項は確立したエビデンスがあるわけではありませんが、死亡原因として感染症が増えている理由として考えられている内容を紹介します。

まず、死亡原因として、感染症が増えたのではなく、その他の死亡原因が減ったというのが正しい解釈だと思います。

特に「心不全」「脳血管障害」「心筋梗塞」に関しては年々、死亡率が減少していることが分かります。

死亡原因の割合が減っている理由(心不全・脳血管障害・心筋梗塞)

  • 透析患者さんの自己管理に関する情報拡散されている
  • 高血圧や貧血、リン・カルシウムに対する薬や治療内容の進化
  • 水分管理や除水量調整の厳格化
  • 心不全に対する治療の進化

医療の進歩はもちろん目覚ましいです。

しかし、これらの死亡率が減っている理由に関しては、SNSなどにより、それぞれの患者さんが正しい自己管理の方法を知り、それを実践してくれているのが一番の理由だと思います。

どんな感染症が多いのか

一口に感染症といっても、様々な感染症があります。

透析患者さんに多い感染症には、

  • 肺炎
  • 敗血症
  • 腹膜炎(腹膜透析の患者さん)

が挙げられます。

肺炎

感染症と一口に言っても、様々な感染症があります。

そのなかで、透析患者さんの死亡原因として多い感染症は、肺炎です。

肺炎は、肺にばい菌(細菌やウイルスなど)が入りこんで、肺が炎症を起こす病気です。

この肺炎が、感染症の死亡原因のなかでも半数を占めていると言われています。

さらに肺炎の中でも特に多いのが「誤嚥性肺炎」とされています。

誤嚥性肺炎

その名の通り、誤嚥によって、様々な菌やウイルスが口から肺に入ってしまいます。

誤嚥をしやすいのは高齢の患者さんです。

透析患者さんの平均年齢は年々増加しているため、この誤嚥性肺炎の割合が増えていると推測されます。

敗血症

敗血症は、様々な原因で、菌やウイルスが体内に侵入し、それが重症化してしまう症状です。

では透析患者さんの体内に菌やウイルスが入る原因はなにが多いのか。

透析患者さんに多い感染経路

  1. カテーテル感染
  2. シャント感染
  3. 尿路感染

①カテーテル感染

長期留置カテーテルや、腹膜透析用のカテーテルから体内に菌やウイルスが侵入してしまいます。

②シャント感染

シャントに刺した針穴などから菌やウイルスが侵入します。

③尿路感染

排尿されないので、菌やウイルスが溜まりやすくなってしまいます。

感染の原因は、透析患者さんに特有の原因が多いです。

透析患者さんは感染しやすく、重症化しやすいことは明らかになっています。

菌やウイルスのすべてを防ぎきることが出来るわけではありませんが、常に清潔に保つことは意識していただいたほうが良いのは間違いありません。

透析患者さんの高齢化

近年、透析患者さんの平均年齢は高齢化しています。

そんななかで、「誤嚥性肺炎」が死亡原因として多くなっています。

透析をしていない方を含めても高齢者に多い誤嚥性肺炎ですが、透析患者さんの場合は重症化してしまうリスクが高くなります。

感染症への対策

感染症の原因となる菌やウイルスは、目に見えないほど小さな敵です。

そのため、新型コロナウイルスやインフルエンザなどを含めて、感染症への対策は非常に難しいと感じます。

それでも感染症への対策を挙げるのであれば、

  • 菌やウイルスが体内に入る可能性のある場所を可能な限り清潔に保つ
  • シャントの腕やカテーテル刺入部は常に観察しておく
  • 食事や睡眠は充分に摂る
  • 体調不良を感じたらすぐ休む

などが挙げられます。

感染すること自体は防ぐことが困難なので、異常を感じたらすぐに休むようにして、なかなか回復しないようであれば早めの受診をおすすめします。

また、シャントの腕やカテーテルの刺入部に赤みやかゆみが出たら、すぐに透析施設に連絡をして、相談受診してください。

減らすことが難しい感染症

透析患者さんに対する死亡原因のうち、「心不全」や「脳血管障害」、「心筋梗塞」といった、高血圧やリン・カルシウムなどが原因となる病気の割合は減少傾向にあります。

そのなかでなかなか減らすことのできない感染症。

高齢化に伴うものもありますが、生活習慣だけでは防ぎきれないところが難しいと思います。

しかし、「透析患者さんは感染すると重症化しやすい」ということは知っておいてください。

そして、体調不良を感じたらすぐに休むこと、回復しないようなら早めに受診することを心掛けてほしいと思います。

それでは素敵な透析ライフをお過ごしください。

ABOUT ME
アバター画像
佐藤さん
病院に勤めて15年。 様々な患者や医師、看護師などの医療関係者と関わってきました。 透析の話を中心に、病気の話、患者の話、スタッフの話、病院内での様々な話を投稿したいと思っています。